海外生活の記録

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【ノルウェー】 ノルウェーの医療費は無料なのか?

先日から舌の裏に口内炎?水ぶくれ?ができては潰れる、というのを繰り返していて気持ち悪いので病院に行くことにした。

ただでさえ病院に行くのって億劫だし、外国で病院に行くのって怖いのですが、アメリカで骨折したし歯医者に行った経験もあるのでだんだんビビらなくなってきています。

しかも、ノルウェーの医療費はタダ!

と思っていたのですが、厳密には完全無料ではないみたいです。
Twitterで下記のようにツイートしたら、完全無料じゃないよ、という指摘を頂いたので、ちゃんと調べてみた。

医療保険制度について

まず日本語で「ノルウェー 医療費」などで調べてみると、北欧の高負担高福祉などの議論について記事がいろいろ出てくる。
制度の説明では在ノルウェー日本大使館の「ノルウェー国民保険制度の概要」が良さそうだが、医療費についての記述は以下のみ。

・医療費給付
国民保険の加入者は、無料で国公立病院での医療を受けることができる。一方、一般・専門診療、心
理カウンセリング、病院までの移動費用、薬代などに患者の一部負担がある。患者負担には上限
(2014 年は 2105NOK)が定められており、それ以上の費用負担が生じる場合には、医療費給付を受
けることができる。

無料やん?
でも、一般・専門診療は一部負担?
よくわからないので、この元ソースであるThe Norwegian Ministry of Labour and Social Affairs 公表の
「The Norwegian Social Insurance Scheme」の最新版を見てみる。

このドキュメントのセクション9にHealth Care Benefits, つまり医療費の給付等について書いてある。

一段落目の最初の文章。

All persons insured in the Norwegian Social Insurance Scheme are granted free
accommodation and treatment, including medicines, in hospitals.

ノルウェー社会保険スキームにカバーされているすべての人には薬を含む治療が病院で受けられます。


一見当たり前っぽいので見逃しがちだが、この「病院で」というのがキー。
続く段落で

For treatment outside a hospital by a doctor (a general practitioner or a specialist), a
psychologist or physiotherapist, and also for prescriptions of important drugs and for
transportation expenses in connection with examination or treatment, the patient has to
pay a share of the cost

病院以外での医師(一般治療、専門家)、心理カウンセラーによる医療、また重要な薬の処方箋や診療や治療のための移動費用はその一部を患者が負担する。
このとき、ここで「一般治療」と大使館の書類で訳されている言葉は、英語ではgeneral practitionerや略してGPと呼ばれていて、ノルウェー語ではfastlage(ファストラーゲ)と言われている医師です。

ノルウェーの診察方式

ノルウェーの公共の医療システムは一次診療と二次診療が明確に分かれていて、まず何科を問わずお医者さんに見てもらう場合は、自分に割り当てられているGPのところに予約をとって診察に行き診てもらいます
そのうえで、さらなる治療が必要と判断された場合は二次医療に当たる病院や専門医療を紹介されるという仕組みです。紹介状なしに一次医療をすっ飛ばして病院や専門医療に自分で行くと保険でカバーされず自己負担になるらしい。

このGPは自分の住んでる場所などに応じてノルウェーで住民登録した時点で自動的に割り当てられます。
しかし、自分で好きな医師に変更することも可能です。

診療にかかるお金

上の文章をまとめると、二次診療に回されて「病院」に行く場合は無料、その他専門治療に回される場合は一部負担。その前に一次診療に行く場合は、成人の場合は一部負担になります、ということですね。

2019年1月1日現在で示されている金額は、GPの診察が一回につき155クローネ(約2000円)、専門医療や心理カウンセラーが351クローネ(約4500円)。


この患者負担分には例外があって、12歳以下の子供は無料です。16歳以下の子供も、外科医や心理療法士、特定の薬や移動費用などが無料になるようです。
書いてて気づいたけど、移動費用って救急車のことかな?

妊娠中・出産後の診察・診療も無料です。

自己負担分にも上限があって、外科医や心理療法士、特定の薬や移動費用などの上限が2369クローネ(約3万円)、それ以外の理学療法やカバーされる範囲の歯科医療、リハビリなどの上限が2085クローネ(約27000円)。
自己負担がこの上限超えると、カードが発行されて、そのカードを提示すれば上限以上分は保険でカバーされるそうです。


最初の診察はお金がかかるけど、病院に移される場合や薬にお金がかかるなどシリアスな場合はカバーされる、という仕組みになってるようなので、安心ですね。

制度の欠点

保険制度の大局から議論する意図はないのですが、完璧に見えるノルウェーの制度もいくつか欠点があります。

待ち時間が長い。

先の私のツイートでもありましたが、一次診療であるGPを予約するには、決められている自分の担当のGPを予約しないといけません。
結局、今週行けるかな、と思って予約したら2週間後と言われました。

北欧の医療費は無料だったり負担が少ないと有名ですが、例えばUCLAの津川さんが何度も指摘されているように、医療費無料のトレードオフとして待ち時間の長さがあります。


こう聞くと、「急病になったらどうするのか?」と思ってしまいますが、もちろん緊急時には救急車を呼べます。ノルウェーでは113が救急車を呼ぶ番号です。


また、救急車を呼ぶほどではないがすぐに病院に行きたい場合は、有料で行ける民間の病院があります。まさに待ち時間を「払う」かお金を払うかという感じですね。
知ってる限りでは、以下の病院がベルゲンとオスロにあって、一律595クローネ(約7500円)で一次診療を受けられるみたいです。
Dr.Dropin


フィンランド人の同僚いわく、ノルウェーはだいぶ早いらしい。フィンランドのほうが待ち時間は長いそうです。
地域差もあるようで、平均でGP一人あたり1500人の患者を持っているようですが、人気の違いや人口分布によって早く予約が取れるGPもいればなかなか取れない人もいるみたい。


歯科がカバーされていない

なぜか歯科診療は基本保険でカバーされません。18歳以下の場合は保険でカバーされますが、大人は特殊な病気や事故で歯が欠けるなどではない限り、全額負担です。
ノルウェー人の友人曰く、がんばって日頃から歯を磨き、虫歯になったら「泣きながら払う」そうです。

私のケースでは、妻が虫歯になって、一度歯医者に連れて行ったら診察のみで600クローネ、そして治療の見積もりで親知らずなど含めて15000クローネと言われました。
日本への航空券と診察代(日本の国民健康保険適用)を足したほうが安かったので、日本に帰ってもらいました・・・。

2019年9月16日追記

別記事で、民間のクリニックについて書きました。

yvrseabgo.hatenadiary.jp